体から血液を採ってしまう。
献血や血液検査くらいでしか「体から血を採る」経験のない人にとって、
一瞬、これは奇異な治療法に思われるかもしれません。
でも、実は血液を採る治療法は、紀元前から存在しているのです。
ギリシャ時代(紀元前9世紀ごろ)からローマ時代(紀元前7世紀ごろ)に、
治療手段として用いられていることがわかっています。
中国5000年の医療史でも、
患部に針を刺して血液を取り除くという針灸が行われていたことが記録に残っています。
たとえば『黄帝内経・霊枢』という紀元前3世紀ごろに書かれた書物には、
血液を採る方法で頑固な病の治療をしていたとあります。
トルコにはヒルに患者の背中の汚血を吸い取らせて病気を治す方法がありましたし、
古代インドでも吸角、瀉血(悪い血液を取り除く)水蛭吸血術などが
治療に利用されていました。
日本にも紀元前4世紀前後には刺絡針法が用いられていたようで、8世紀に公布された大宝律令の中には、刺針、針絡療法の記載があります。
また、アラブ民族や朝鮮半島などでも瀉血のよる治療が行われています。このように瀉血という治療法は、あらゆる民族が古くから用いてきたのです。
汚血を取り除くことで病気が治るということを、
国も風習も異なる人々が共通して認識していたということは、
ちょっと不思議な気もします。
と同時にそれだけ確かな治療法であるということが裏付けられているとも考えられますね。
蔡篤俊 院長